コラム

崎陽軒のシウマイ弁当

2019年4月20日   クリント・イーストウッド監督・主演の映画『運び屋』が話題になっている。麻薬の運び屋になった90歳の老人が主人公である。クリント・イーストウッドの映画は決して期待を裏切らない。ダーティー・・・

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子どもより親が大事

2019年3月20日   三鷹の駅前にその昔「山の音」という喫茶店があって、よく通ったものだった。漫画家の山松ゆうきちが近くに住んでいて、打ち合わせに使っていた。山松が借りていた家にも何度か行ったが、山松は宵越・・・

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弱者の戦略

2019年2月20日   今は、明るい時代だろうか、それとも暗い時代だろうか。ハンナアーレントの『暗い時代の人々』は、ファシズムが吹き荒れたヨーロッパの暗い時代のことである。それに比べれば今は、暗い時代ではない・・・

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ハラスメント・ハラスメント 

2019年1月20日   獅子は千尋の谷に我が子を突き落とすというが、もし今の時代にそれをやったら、どうなるか。獅子といえども、ただでは済まない。動物界からの引退まではないだろうが、さすがに百獣の王の地位からは・・・

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漱石が来て虚子が来て大三十日

2018年12月20日   夏目漱石と高浜虚子がやってくるというのだから、ずいぶん贅沢な大三十日(おおみそか)だ。誰の句かといえば、正岡子規である。明治28年、柴田宵曲の『評伝正岡子規』には、漱石が松山から出て・・・

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不射之射

2018年11月20日   弓道は精神の技である。温泉場の射的ぐらいしかしたことのない私でも、それくらいはわかる。ねらって的に当てようとしてはいけない。弓を引くのは射手なのか。それとも射手をいっぱいに引き絞るの・・・

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マロニエの木蔭

2018年10月20日   だいぶ前になるが、予備校で教えていた頃、数学を担当していた講師から聞いた話。大学の数学科に進む学生は、みな自らを数学の天才かもしれないとたのむところがある。しばらくしてそうじゃなかっ・・・

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異形の政治家

2018年9月20日   ドナルド・トランプは、不思議な政治家である。普通の政治家は、習近平のように国家や自分の権力の拡大に腐心する覇権型か、安倍氏のようにいろいろな勢力を調整してバランスをとる調整型かである。・・・

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幸福の青いチップ

2018年8月20日   タシケントの地下鉄は世界で最もきれいな地下鉄の一つに挙げられているだけあって、荘厳な地下宮殿のような趣があった。1,000スムの紙幣で買った青い小さなチップを自動改札機に入れて中に入る・・・

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遠くに永代橋を見ながら

2018年7月20日   ほぼ1年にいっぺんだが、墨田川にかかる中央大橋を徒歩で渡って佃の方へ行く。といっても、大した用事ではない。1年にいっぺんの仕事で出かけたときに、八丁堀の方から何人かで連れ立って昼飯を食・・・

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私の「西郷ろん」

2018年6月20日   大河ドラマの『西郷どん』はさておくとして、西郷隆盛は、生涯で二度南島に流されている。一度目は、三十歳のとき、安政の大獄で追及され入水自殺に失敗して、奄美大島に流された。二度目は、三十四・・・

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新宿ゴールデン街のこと

2018年5月20日   新宿の靖国通りから区役所通りに折れて、一つ目の路地を右に入ると新宿ゴールデン街の入り口を示すゲートがある。そこから、迷路のように入り組んだ路地に足を踏み入れると、白人の観光客が多いのに・・・

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金正恩氏の髪型

2018年4月20日   「僕の髪ぃ~が肩まで伸びて~」と歌う吉田拓郎の『結婚しようよ』が流行っていた頃、私の髪も肩ぐらいまではあった。それが今では風前のともしびである。全部なくなってしまった頃、『お葬式しよう・・・

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中央線の風景

2018年3月20日   日曜日ののどかな午後、高円寺の駅のホームのベンチに座って、週刊新潮を読んでいる人がいたので、思わず隣に座ってのぞき込んでしまった。週刊新潮といってもタダの週刊新潮ではない。覗き見た表紙・・・

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異邦人の思ひ出

2018年2月20日   事務所が移転したところは因縁のある場所である。数年前まで「異邦人」というバーがあった。そこにはかなり年代物の木賃アパートが建っていて、その一階というか半地下が小さなカウンターだけのバー・・・

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自分が生きた証

2018年1月20日   一生働かなくていいという人の暮らしはどんなだろうと思う。働かなくていいといっても、ぜいたくな暮らしをしながらのものと、つましい暮らしをしながらのものとは、おもむきがだいぶ違う。 &nb・・・

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仁義礼智信

2017年12月20日   二十年ほど前になるが、ある会館の五つの部屋の命名を頼まれて、儒教の五つの教えである仁義礼智信からとって、それぞれの部屋の名称にしたことがあった。仁の間、義の間、礼の間、智の間、信の間・・・

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昭和最後の秋のこと

2017年11月20日   宇宙とは「時空」の意味だと今まで思わなかった。宇宙と聞くと、銀河の向こうに広がる宇宙空間のことしか思い浮かばなかった。古代中国の『淮南子』という本に、宇宙の宇は上下四方の空間をいい、・・・

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人は何故それを背負うか

2017年10月20日   背中にリュックを背負っているリュック族がじわじわと増えている。電車の中などで、前にも後ろにも、右にも左にもリュック族がいて囲まれてしまうと、なんだか終戦直後の買い出し列車を思い出しそ・・・

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生き恥をさらすということ

2017年9月20日   「司馬遷は生き恥さらした男である。」の書き出しで始まる武田泰淳の『司馬遷』に、歴史家の兄弟の話が出てくる。時の権力者がその君主を殺した。歴史家がそのことを記録したら、けしからん奴だと権・・・

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元号の話

2017年8月20日   平成の元号を決めるときには、他に「修文」と「正化」という二つの候補があったそうである。しかし、ローマ字表記の頭文字がどちらも「昭和」と同じ「S」になるので、不都合ではないかという意見も・・・

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番狂わせの一番

2017年7月20日   横綱稀勢の里の調子が悪い。優勝してあちこち引っ張り出されているうちにすっかり脇が甘くなり勝てなくなってしまった琴奨菊に比べると、稀勢の里は意識して脇を締めているようなところがあって、ま・・・

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人間嫌いと短命の関係

2017年6月20日   本は二度も三度も読んで初めて本当に読んだことになるんだという気持ちにさせられたのは、森鴎外の『渋江抽斎』を何度も読んでからである。読み終えてしばらく経つとまた読み返してみたくなり、いつ・・・

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里山という幻想

2017年5月20日   『東京へゆくな』という谷川雁の詩がある。「東京へゆくな」のフレーズの次は、なんだったか思い出せないので、調べてみたら「ふるさとを創れ」だった。まるで政府の「地方創生」を応援するようなフ・・・

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あんみつと大仏

2017年4月20日   湯島へ行った帰り、道を探しながら歩いているうちに、そうだ、あそこへ寄ってみようと思い立った。若いとき、夏休みにアルバイトをしていた店で、今も営業していると知って、機会があったらいつか訪・・・

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一生を棒に振る

2017年3月20日   ホトトギス社に勤めているという女の人から前に名刺をもらったことがあったなと思って、名刺の束をひとしきり探してみたが、出てこなかった。ホトトギスといえば、正岡子規、高濱虚子から今に続く俳・・・

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それを猟師が鉄砲でうってさ

2017年2月20日   最近本で読んで、人に話さずにいられない面白い話がある。栃木県足利郡吾妻村の龍光院というお寺に、古くから貨狄(カテキ)様と名付けられた木像があって信仰を集めていたそうだ。もともとは村の清・・・

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仮面の酷薄

2017年1月20日   イスラム圏では、女性たちが顔を隠していたベールを外しつつあるというのに、日本ではマスクをして顔を隠す女性が増えているのはどうしたことだろう。ある日、電車に乗って、向かいの席の乗客を見た・・・

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下駄屋の主人

2016年12月20日   一枚の絵に強く引き付けられた。重松鶴之助という作者の「閑々亭肖像」という絵である。黄色の着物を着て藍色の帯を締めた、どうということのない和服姿の中年男を斜め前から描いている。小林秀雄・・・

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トランプとピケティの関係

2016年11月20日   武力や富による支配には命がけで抵抗する世界の人たちが、知による支配にはなぜ反発しないのか常々不思議に思ってきた。その理由としては、まずほとんどの人が子どものうちから学校で知による選別・・・

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