コラム

弱者の戦略

今は、明るい時代だろうか、それとも暗い時代だろうか。ハンナアーレントの『暗い時代の人々』は、ファシズムが吹き荒れたヨーロッパの暗い時代のことである。それに比べれば今は、暗い時代ではないと思う。しかし、明るい時代だという気・・・

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ハラスメント・ハラスメント 

獅子は千尋の谷に我が子を突き落とすというが、もし今の時代にそれをやったら、どうなるか。獅子といえども、ただでは済まない。動物界からの引退まではないだろうが、さすがに百獣の王の地位からは降りることを余儀なくされるだろう。我・・・

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漱石が来て虚子が来て大三十日

夏目漱石と高浜虚子がやってくるというのだから、ずいぶん贅沢な大三十日(おおみそか)だ。誰の句かといえば、正岡子規である。明治28年、柴田宵曲の『評伝正岡子規』には、漱石が松山から出てきて大晦日に子規を訪ねたことは記してあ・・・

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不射之射

弓道は精神の技である。温泉場の射的ぐらいしかしたことのない私でも、それくらいはわかる。ねらって的に当てようとしてはいけない。弓を引くのは射手なのか。それとも射手をいっぱいに引き絞るのが弓なのか。的に当てるのは射手なのか。・・・

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マロニエの木蔭

だいぶ前になるが、予備校で教えていた頃、数学を担当していた講師から聞いた話。大学の数学科に進む学生は、みな自らを数学の天才かもしれないとたのむところがある。しばらくしてそうじゃなかったことを知るが、それから数学の教師にな・・・

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異形の政治家

ドナルド・トランプは、不思議な政治家である。普通の政治家は、習近平のように国家や自分の権力の拡大に腐心する覇権型か、安倍氏のようにいろいろな勢力を調整してバランスをとる調整型かである。トランプはそのどちらでもない。要する・・・

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幸福の青いチップ

タシケントの地下鉄は世界で最もきれいな地下鉄の一つに挙げられているだけあって、荘厳な地下宮殿のような趣があった。1,000スムの紙幣で買った青い小さなチップを自動改札機に入れて中に入るのだが、1,000スムは日本円に換算・・・

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遠くに永代橋を見ながら

ほぼ1年にいっぺんだが、墨田川にかかる中央大橋を徒歩で渡って佃の方へ行く。といっても、大した用事ではない。1年にいっぺんの仕事で出かけたときに、八丁堀の方から何人かで連れ立って昼飯を食べに行くだけのことである。そこからは・・・

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私の「西郷ろん」

大河ドラマの『西郷どん』はさておくとして、西郷隆盛は、生涯で二度南島に流されている。一度目は、三十歳のとき、安政の大獄で追及され入水自殺に失敗して、奄美大島に流された。二度目は、三十四歳のときで、西郷を嫌う藩主の島津久光・・・

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新宿ゴールデン街のこと

新宿の靖国通りから区役所通りに折れて、一つ目の路地を右に入ると新宿ゴールデン街の入り口を示すゲートがある。そこから、迷路のように入り組んだ路地に足を踏み入れると、白人の観光客が多いのに驚かされる。狭い路地を行き交う客ばか・・・

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金正恩氏の髪型

「僕の髪ぃ~が肩まで伸びて~」と歌う吉田拓郎の『結婚しようよ』が流行っていた頃、私の髪も肩ぐらいまではあった。それが今では風前のともしびである。全部なくなってしまった頃、『お葬式しようよ』となるのだろうか。  ・・・

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中央線の風景

日曜日ののどかな午後、高円寺の駅のホームのベンチに座って、週刊新潮を読んでいる人がいたので、思わず隣に座ってのぞき込んでしまった。週刊新潮といってもタダの週刊新潮ではない。覗き見た表紙の題字には、「潮新刊週」とある。うぬ・・・

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異邦人の思ひ出

事務所が移転したところは因縁のある場所である。数年前まで「異邦人」というバーがあった。そこにはかなり年代物の木賃アパートが建っていて、その一階というか半地下が小さなカウンターだけのバーの造りになっていた。バーには屋根裏部・・・

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自分が生きた証

一生働かなくていいという人の暮らしはどんなだろうと思う。働かなくていいといっても、ぜいたくな暮らしをしながらのものと、つましい暮らしをしながらのものとは、おもむきがだいぶ違う。   ぜいたくな暮らしというと、作・・・

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仁義礼智信

二十年ほど前になるが、ある会館の五つの部屋の命名を頼まれて、儒教の五つの教えである仁義礼智信からとって、それぞれの部屋の名称にしたことがあった。仁の間、義の間、礼の間、智の間、信の間の五つである。二つを合わせて使うときは・・・

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昭和最後の秋のこと

宇宙とは「時空」の意味だと今まで思わなかった。宇宙と聞くと、銀河の向こうに広がる宇宙空間のことしか思い浮かばなかった。古代中国の『淮南子』という本に、宇宙の宇は上下四方の空間をいい、宙は古往今来の時間をいうと書いてある。・・・

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人は何故それを背負うか

背中にリュックを背負っているリュック族がじわじわと増えている。電車の中などで、前にも後ろにも、右にも左にもリュック族がいて囲まれてしまうと、なんだか終戦直後の買い出し列車を思い出しそうになる。といっても、実際は知らないの・・・

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生き恥をさらすということ

「司馬遷は生き恥さらした男である。」の書き出しで始まる武田泰淳の『司馬遷』に、歴史家の兄弟の話が出てくる。時の権力者がその君主を殺した。歴史家がそのことを記録したら、けしからん奴だと権力者は殺してしまった。すると歴史家の・・・

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元号の話

平成の元号を決めるときには、他に「修文」と「正化」という二つの候補があったそうである。しかし、ローマ字表記の頭文字がどちらも「昭和」と同じ「S」になるので、不都合ではないかという意見もあり、全員一致で「平成」に決まったと・・・

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番狂わせの一番

横綱稀勢の里の調子が悪い。優勝してあちこち引っ張り出されているうちにすっかり脇が甘くなり勝てなくなってしまった琴奨菊に比べると、稀勢の里は意識して脇を締めているようなところがあって、まさか琴奨菊の二の舞になるようなことは・・・

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人間嫌いと短命の関係

本は二度も三度も読んで初めて本当に読んだことになるんだという気持ちにさせられたのは、森鴎外の『渋江抽斎』を何度も読んでからである。読み終えてしばらく経つとまた読み返してみたくなり、いつの間にかページをめくっていて、他の本・・・

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里山という幻想

『東京へゆくな』という谷川雁の詩がある。「東京へゆくな」のフレーズの次は、なんだったか思い出せないので、調べてみたら「ふるさとを創れ」だった。まるで政府の「地方創生」を応援するようなフレーズだが、谷川雁が筑豊の中間に住ん・・・

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あんみつと大仏

湯島へ行った帰り、道を探しながら歩いているうちに、そうだ、あそこへ寄ってみようと思い立った。若いとき、夏休みにアルバイトをしていた店で、今も営業していると知って、機会があったらいつか訪ねてみようと思っていたのだ。あらため・・・

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一生を棒に振る

ホトトギス社に勤めているという女の人から前に名刺をもらったことがあったなと思って、名刺の束をひとしきり探してみたが、出てこなかった。ホトトギスといえば、正岡子規、高濱虚子から今に続く俳句雑誌で、夏目漱石が明治38年に『吾・・・

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それを猟師が鉄砲でうってさ

最近本で読んで、人に話さずにいられない面白い話がある。栃木県足利郡吾妻村の龍光院というお寺に、古くから貨狄(カテキ)様と名付けられた木像があって信仰を集めていたそうだ。もともとは村の清右衛門という者の家にあったのを寺に納・・・

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仮面の酷薄

イスラム圏では、女性たちが顔を隠していたベールを外しつつあるというのに、日本ではマスクをして顔を隠す女性が増えているのはどうしたことだろう。ある日、電車に乗って、向かいの席の乗客を見たらほとんどの女性がマスクをしていたの・・・

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下駄屋の主人

一枚の絵に強く引き付けられた。重松鶴之助という作者の「閑々亭肖像」という絵である。黄色の着物を着て藍色の帯を締めた、どうということのない和服姿の中年男を斜め前から描いている。小林秀雄に今一番の評論家だと言われ、芸術新潮に・・・

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トランプとピケティの関係

武力や富による支配には命がけで抵抗する世界の人たちが、知による支配にはなぜ反発しないのか常々不思議に思ってきた。その理由としては、まずほとんどの人が子どものうちから学校で知による選別を徹底的にたたきこまれ、知による階層化・・・

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思い出の歌声喫茶

矢切の渡しのこちら岸は葛飾柴又だが、向こう岸は千葉の松戸だということを初めて知った。松戸に講演で行った折、夜の懇親会の席でのこと。古い世代で『矢切の渡し』といえば、大ヒットした歌謡曲の曲名である。細川たかしの「連れて逃げ・・・

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センチメンタル・ジャーニー

確かこの倉庫が立っているあたりに、あのころは土俵があった。田舎に帰ったついでに、昔住んでいたあたりにみんなで行ってみようということになり、車を飛ばして来てみたのだ。今は市町村合併で地名も変わり、家ももちろん建て替えられて・・・

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