コラム

角栄の恋文

2011年10月20日   越山会の女王と呼ばれた佐藤昭と田中角栄のことは前にこのコラムで書いたことがある。「離婚して雑司ケ谷の借家に住んでいた佐藤の元に、ある日突然大きな外車に乗った田中角栄が訪ねてくる。外車・・・

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コロッケ投手とうどんこバッター

2011年9月20日   コロッケ屋上がりの投手が、コロッケ作りの極意を生かした超スローボールで活躍する話をなにかに書いたことがある。もう35年ぐらい前だ。投手の名は柿野種二郎。煮立った油鍋にコロッケを投げ入れ・・・

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時は流れて、時と知り

2011年8月20日   住みなれている町でも、それまで全く足を踏み入れなかった路地というのはある。そういう路地の中に、3か月ほど前からときどき行くようになった店がある。10人も座れば一杯になるカウンターだけの・・・

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宇宙創成

2011年7月20日   人はみな自分というものを感じながら生きている。どんな風に感じているかというと、おそらく会社や学校などを含む社会制度に対する身構え方や、家族や友人、知人などを含む周囲の人々との関係の中に・・・

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遥かなる墓碑

2011年6月20日   魯迅の『故郷』を初めて読んだのは、たしか中学の教科書ではなかったかと思う。 「厳しい寒さの中を、二千里の果てから、別れて二十年にもなる故郷へ、私は帰って行った。」で始まるそれは、「もう・・・

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元気をもらう、元気をおくる

2011年5月20日   今回の震災でいち早く名乗りを上げた芸能人やスポーツ選手たちが、みな同じように口にしていた言葉がある。それは「被災者に元気をおくりたい」であったり、「被災者に元気を届けられるようなプレー・・・

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静かな原子爆弾

2011年4月20日   心に愛がなければどんなに美しい言葉も相手の胸に響かない、という聖パウロの言葉を思い起こした。菅総理や枝野氏をはじめ、原子力安全・保安院の係官、東京電力の役員や原子力の専門家など、テレビ・・・

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地震と常識

2011年3月20日   花粉に苦しめられている。日本中の山林に杉の木を植えさせて、国土を花粉だらけにしたのは政府である。完全な失策だ。それに限らず政府はやることなすこと失策ばかりだが、なぜこんなに失策ばかりす・・・

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占領下の日本

2011年2月20日   世の中にはうなぎが特別好きだという人がいるので、そういう人と比べるととうてい好きな部類には入らないと思うのだが、少し前から事務所の近くに気に入ったうなぎ屋を見つけてときどき食べに行って・・・

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悲しみの門を出でよ 

2011年1月20日   今という時代、現代という時代は、人が生きるに値する時代なのだろうかと、ときどき思うことがある。人は生物として生きているだけで、決して意思の力によって生きているわけではないし、人が生きる・・・

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ブルートレイン

2010年12月20日   札幌に出張しての帰りだった。札幌駅で千歳空港行きの電車を待っていると、隣のホームにブルートレイン「北斗星」が入ってきた。「北斗星」は、車体はいかにも古く、年季がはいっている様子だった・・・

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40年目の真実

2010年11月20日   いつもゆったりとした気持ちで1年を過ごせればいいのだが、そんな日は1年に1日もあればいいぐらいで、あとの364日は「怠け」と「焦り」を繰り返しているうちに、ああ終わってしまったなあと・・・

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ねぎのハホハホ

2010年10月20日   近くのそば屋でカレー南蛮うどんとご飯を食べていたら、向こうの席でしゃべっているのが聞こえてきた。「ラーメンとライス、うどんとご飯を食べる人がいるけど、よく食べられるよね」。「いいじゃ・・・

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故郷は遠きにありて

 2010年9月20日   このところどんな新しい映画を見てものめりこんでいけないので、映画なんて面白くないと思いはじめていたとき、目の前にあったDVDに気が付いた。少し前に人から返してもらってそのまま机の上に・・・

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人は虚構なしに生きられない

2010年8月20日   京都で武者小路千家の千宗守氏の講演を聴く機会があった。演題は「茶の湯の真髄」。ちょうど大暑の日に当たっていたので、暑い中での茶の湯の稽古の話から始まった。それから、着物の話。着物は四季・・・

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ターバン野口を知ってますか

2010年7月20日   高田馬場に老姉妹が営む甘味喫茶がある。店は人通りの絶えない賑やかな通りに面しているが、表に出ている食品サンプルがホコリをかぶって黒ずんでいるためか、入る客は驚くほど少ない。私の好物の氷・・・

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探しものはなんですか

2010年6月20日   去年の手帳と今年の手帳をセットにして使っている。どんな方法でセットにするか。ことと次第によっては手帳史上最大のヒット作となる可能性もあったのだが、結局そうならなかったのは、なんのことは・・・

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一世一代のボレーキック

2010年5月20日   十代のころ友達とキャッチボールをしていて、ナックルを投げたら見事に決まって股間を直撃、赤鬼のようになった友達からバットを持って追いかけられたことがあったが、ナックルが決まったのはあとに・・・

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幻想と幻滅

2010年4月20日   人は何かに幻想を抱き、そしてやがて幻滅する。人の一生はその繰り返しである。幻滅の数が人の顔に深いしわを刻む。それでも人は幻想を抱くのをやめない。それは人が抜けているとか、お人よしである・・・

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大日本甘党宣言

 2010年3月20日   柴又のおばさんから送ってきた、いかにもうまそうなあんみつを冷蔵庫にしまっておいたら、いつの間にかなくなってしまった。そのうち食べようと思いながら、夜は帰りが遅く、寝る前にあんみつなど・・・

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冬の夜はミステリー

2010年2月20日   半七捕り物帳を読んでいて、場面に知っているお寺などが出てくると、俄然イメージが鮮明になってくる。これは本を読んでいて、実際に面識のあった人が出てくると活字が立ちあがってくるような感じを・・・

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いよよ華やぐいのちなりけり

2010年1月20日   このあいだの土曜日は、家の中にいてもうすら寒く感じられるような、ひどく空気の冷たい日だった。近くの中学校で講演会があるというので、あまり準備もせず軽装で自転車を飛ばして出かけたが、目指・・・

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役所の言葉

2009年12月20日   新聞にでかでかと出ていた映画の宣伝文句を何の気なしに読んでいたら、「空前絶後のスケール感で展開する」というのが出ていた。なんだ、この「スケール感」というのは。「スケール」でいいじゃな・・・

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コレクター

2009年11月20日   最近ときどき寄るようになった酒場は、おそらく80歳近いと思われる女店主一人だけの店である。5人も座ればいっぱいになるカウンターの中からジロッと睨んで、たまに思い出したように、「あら、・・・

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金の見まつがい

2009年10月20日   電車に乗っていたら、「他人ごととは思えないね。結婚は現代の病気だ。」というビートたけしの中吊りポスターが目に付いた。なるほど、うまいこと言うもんだと思いながら、でもいったいどういう意・・・

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聖書と論語

2009年9月20日   行きつけの飲み屋でたまたま同席した物書きに、「あなたの本はトイレに置いて、ときどき読んでいます」と話しかけた。「トイレですか」と言いながら、その人の表情が少し不満げに見えたので、「トイ・・・

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プッシャー・ゲームの夢

2009年8月20日   夜中に目を覚ますとヤモリの鳴く声がした。キキー、キキーと間断なく続いている。どうやら一匹ではない。枕元にあった眼鏡をかけて目を凝らすと、天井に2匹這っている。タイの中部、ミャンマーとの・・・

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言語にとって神とは何か

2009年7月20日   ある日の産経新聞の第一面に「人生戦略の立て方」という一文が載っていた。最近やたらと顔写真が載っているKという女性評論家のもので、日本人は人生戦略もなくただ漫然と生きている、時間の使い方・・・

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ラオスに降る雨

2009年6月20日   ラオスに行くことになった。ラオスだけではない。結構ハードな仕事のスケジュールで、カンボジアやタイの山間部にも行くのだが、ラオスは特にどういう国か分からないので興味を持った。もっとも、カ・・・

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シベリア

2009年5月20日   空腹が得意という人はあまりいないだろうが、私はからきし空腹に弱い部類に入る。人は食べるものがなくなると、筋肉がタンパク質に代わり、脂肪がエネルギーとして利用されるようになる。だから、普・・・

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