コラム

足の裏を洗う

1997年5月20日

 

子供の頃は足の裏のくすぐりっこなど、よくした気がする。足の裏に限らず、くすぐられるのは確かに苦しい。しかしヨーロッパ中世の拷問の中にくすぐるのもあって、そのための道具までもあるらしく、どこかに展示されているという記事を読んだ。それほどだったろうかと、自分の手でくすぐってみても、そんなにはくすぐったくない。

 

香港に足の裏のマッサージがある。家人に少し踏んでもらうだけでもいいくらいだから、プロに徹底してやってもらえばさぞやと思うが、テレビでタレントたちがやっているのを見ると相当に痛そうだ。これこそ拷問と見えなくもない。面白そうだから、一度やってみてもらおうと、香港に行った折に店を探し出したが、いざ扉を開けるとなるといかにも胡散臭そうで結局躊躇してしまった。

 

足の裏には、欠点、弱点という意味

 

があると辞書に出ている。そのほか、足の裏をかくと馬鹿になるとか、足の裏をくすぐれば貧乏するとか、そんなのがことわざに出ている。どのみち足の裏は、ろくないわれ方をしていない。

 

こんなに評判のよくない足の裏を、洗えば、どうなるか。あっさり、「白くなる」、とのみいって後世に残る名句を物したのが、かの「咳をしても独り」の尾崎放哉先生である。

 

足の裏洗えば白くなる

 

深夜に、独り足を洗うときなど、つぶやきたくなる句である。