コラム

無趣味の趣味

1998年1月20日

 

ある会で、趣味をきかれて「なし」と答えるべきところを、「無趣味」と書いたら、会報に「趣味:無趣味」と印刷されてしまった。「無趣味が趣味ってどういうことですか」。なにか深い意味でもあるように思われてきかれるので困った。あたりさわりのないところでは、「読書」だろうが、読書は趣味というには度を超していてもう悪癖に近い。ゴルフくらいがちょうどいいのだが下手すぎて、趣味にはほど遠い。絵もやったが、不遜にもすぐに画家をめざそうと思ってしまった。音楽もプロになろうと思ってしまった。そういう邪心が災いするので、なかなか趣味の境地には到達しない。

ところが、このごろブリキのおもちゃを集めるのが、かろうじて趣味の域かもしれないと思えるようになった。はじめた頃には利殖の気持ちもないではなかったが、不況でドーンと値下がりして邪心はすっかり吹き飛ばされてしまった。

ブリキのおもちゃ、英語でティン・トイの世界は、テレビの平成鑑定団の北原照久氏が有名だが、コレクターは結構多い。先日、ティン・トイの展示即売会に出かけたら、来ていた人たちがいかにも「おたく」という一種独特の雰囲気を漂わせていて、自分もそうなのかと思うと気恥ずかしくなって、早々に退散した。

  趣味といっても、コレクションも少なくまだまだだが、自分ではプラハで買ったアンティークの小さな「大砲」が、秘かに宝モノである。