コラム

戦後の戦争

1999年12月20日

 

いわれは知らないが、7月の初めに公認会計士の日というのがある。その日を記念していつも講演会が開かれるのだが、今年の講師を誰にしようというので、西尾幹二氏がいいと提案したらあっさりと通ってしまった。西尾幹二氏はもともとはニーチェ学者だが、「朝まで生テレビ」などにもよく出演していた。昨年、『国民の歴史』という本を出して、本屋にこれでもかとばかり平積みされていたのは知っていた。大方の内容は推測できた、読み出せば止まらないだろう、しかし読んだところでどうなるのだ、それならビッグコミックの方が時間がかからなくていい。しばらく読みたい誘惑に抗ってきたのだが、とうとうこらえきれずにこの間買ってきて読んでしまった。西尾氏といえば、だいぶ前のことだが娘が通っていた幼稚園の父兄会で見かけたこともある。幼子と遊戯をしている初老の父親を見て、あれが西尾幹二かと密かに思ったのだった。

 

アメリカともう一度戦争をすべきだと言ったのは誰だったか忘れたが、そのことは頭から消えなかった。『国民の歴史』には、「日本が敗れたのは戦後の戦争である」と書いてある。アメリカには自由、正義、人道、人権があるのに対し、日本は性根が腐っている。だから罪悪感を持って反省し続けなければならない。アメリカをお手本にして改革しなければならない。そういう考え方が植え付けられつづけたという。だから、今も日本は敗れつづけている。欧米も戦前の日本も同じように侵略戦争を是としてきた。日本は運悪く負けただけなのに、なぜ性根までが腐っていると思いこまされなければならないのかという。

 

公認会計士の多くは四大監査法人に所属している。それらは完璧に欧米の息がかかっているせいもあって「グローバル・スタンダード」とやらを金科玉条のように唱える会計士が少なくない。アメリカをお手本にするのが当然だという思考の自動機械のような会計士も珍しくない。それを一喝してもらおうということで提案したのだが、西尾氏は都合が悪くダメだと言う。結局、植草ナニガシというテレビでもしょっちゅう見かけるが、毒にも薬にもならないエコノミストに決まった。去年は桜井よし子さんで、話しの方はともかく懇親会が盛り上がったのでまあよかったのだが、今年はそれも望めそうにない。

 

ところで、街を歩けばGジャンの大ブームである。ひさびさに起こったブームの原因を考えてみると、一つは国内の不況だろう。まずGジャンはなんといっても「安くて丈夫」なのである。二つ目は中国の生産技術の飛躍的な向上である。安いのに今度のGジャンは「デザインがいい」のである。このことは今後の日本の製造業の行方を占う上で極めて重大な要素である。三つ目は、うーん、各位にお考えいただこう。