コラム

通信犯罪にご用心

2004年11月20日

 

杉並区の広報を見ていたら、区内の犯罪が減少傾向にあると出ていた。空き巣は17%、ひったくりは37%も減少したらしい。代わりに増えたのが詐欺などの知能犯で、67%も増加している。なかでも特に急増しているのがオレオレ詐欺で、被害額は都内でも1日あたり870万円にものぼるという。何人でやっているのかわからないが、仮に100人でやっているとしても、1人あたり87,000円の日当となれば相当の収入である。利益を半分と見ても1日4万円以上の上がりがあれば、こたえられないだろう。必要経費は振込口座の開設費用や事務所の賃貸料、それと電話代ぐらいだろうか。もっとも最近はかなり綿密な事前調査をしているそうだから、調査費もそれなりにかかっているのかもしれない。というより、ある程度の調査費をかけても充分に割の合う犯罪なのである。知人のところにも「娘を預かっている」という電話があって、「箸にも棒にもかからない生意気な娘だ」と言われたので、てっきり自分の娘だと思って慌てたらしい。「いやあ、よく調査してますよ」と笑いながら、知人は事なきを得て胸をなで下ろしていた。

ビジネスの世界でも、百貨店やスーパーのように客と顔を合わせる対面販売が減って、ネット販売や通信販売が増える傾向にある。プロ野球で鉄道や百貨店などの旧来の事業をやってきた会社が退場して、ソフトバンク、楽天、ライブドアといった、なにをやっているのかわからない会社が前面に登場したことに象徴されている。犯罪の世界でも同じことが起きていて、対面犯罪が減りネット犯罪や通信犯罪が増えているということだろうか。犯罪者の思考様式というのはもちろん知るよしもないが、対面犯罪より通信犯罪の方が割りがいいとなれば、通信犯罪の方に事業転換を図っていくのはビジネスの論理と同じことなのだろう。

ビジネスの論理と言えば、このところのJRの利益追求の姿勢にはすさまじさを感じる。乗客の便宜などはそっちのけで、乗客を詰め込めるだけ詰め込んで車両がいっぱいになるまでは発車しようとしない。国鉄時代には列車ダイヤ作りで世界一のレベルを誇ってきたスジ屋と呼ばれる職人集団があった。かつて列車をいかに早く安全に運ぶかに腕を振るってきたスジ屋が、今はただ利益追求に明け暮れているのだろう。JRは民間会社なのだから、当然と言えば当然なのだが、やがて郵便局もそういうことになっていくのかとやはり寂しい気がする。