コラム

ハンバーガーは世界を覆う

2002年10月20日

 

人にものを買わせるのは、これからは心理学の応用ですよと専門家は言う。ファストフードにはその成果が随所に活かされているらしいと誰かに話したら、「ハンバーガーが半額だと思って頼んだら、日曜日で半額セールはやってないといわれても、それならいいですとは、恥ずかしくてなかなか言えないじゃないですか。そういう消費者の心理もうまく利用してるんでしょうね」と言う。ちょっと違うんじゃないかという気はするが、それより私はハンバーグとハンバーガーがごっちゃになって、どっちがどっちかわからなくなることが最近はある。昔はそんなことはなかったが、だんだん言葉の緊張感が緩んできているせいだろうと思う。早い話が、言い間違いなんて気にならなくなっている。それと、あのパンの間にひしゃげた肉団子がコンパクトに挟まった姿は、ハンバーガァーと開くよりも、ハンバーグゥと詰まりたくなるような言い方を連想させ、その連想がいつも決まって作用するという原因もある。

ところで、マクドナルドのハンバーガーチェーンを始めたレイ・クロックと、あのウォルト・ディズニーは、ともにイリノイ州の出身で、ディズニーは1901年、クロックは1902年と1年違いで生まれ、同じように高校を中退し、第1次世界大戦中は同じ衛生隊に属し、若い頃からの知り合いだったと、『ファストフードが世界を食いつくす』(エリック・シュローサー著、草思社刊)に書いてある。イリノイは、シカゴを中心とするアメリカ中西部の州で、ミシシッピー川が流れ、アメリカ民主主義のシンボルともいえるリンカーンが出たことでも知られているが、世界を覆いつくすアメリカ文化の象徴ともいうべきマックバーガーとディズニーランドは、いわば出自を共有する仲だったわけだ。

オサマビンラディンの次の標的は浦安の東京ディズニーシーだと、どこかの占い師が言っていると聞いて、そんなアホなと笑ってしまったが、そう見当違いでもないのかもしれない。次は、マクドナルドのハンバーガーに狂牛病の肉を入れようと企んでいるとか誰かが言い出せば、ちょうど符丁は合う。

それにしてもあの大アメリカに勝負を挑もうなんて、蟷螂の斧の譬がなくならないはずだ。この先どういう展開になるかわからないが、どこかの国の様子を見れば、あのアフガニスタンの岩山にディズニーマウンテンワールドができて、首都カブールの街角にマクドナルドの黄金のアーチが輝くとき、アメリカの制覇は間違いなく成ったといえるのだろう。