コラム

どっちが現実?

2008年9月20日

 

事務所のスタッフを募集するために求人広告を出したら100人以上の応募があった。リクルートからは30人応募があればいい方だと聞いていたが、私は100人ぐらいは来るかもしれないと思っていた。なぜか。自分で書いた広告文に自信があったからだ。リクルートのコピーライターが束になっても、これにはかなわないだろうというくらい、実は自信があった。こんな広告文である。

 

 

考えたり、調べたりが好きな人。

 

10年前に、このキャッチフレーズで募集広告を出しました。驚くほどたくさん方からの応募があり、そのときに入社したまったくの未経験者が、このたび税理士となって独立することになりました。この10年間、募集広告を出したことがなく、もしかするとこのキャッチフレーズはもう時代遅れなのかもしれません。でも、10年前と同じように、やっぱり「考えたり、調べたりが好きな人」が来てくれないかなという思いで、この募集広告を出すことにします。

 

最近の求人広告は専らインターネットである。『とらばーゆ』とか『ビーイング』といった求人雑誌はとうの昔にすたれたと聞いて、「えっ」と驚きつつ、「う~む」と時代の流れを思い知った。つまり、求人広告の世界では、わずかに求人雑誌などがあっても、そっちが今はむしろ“仮想世界”で、インターネットの方が現実世界なのだ。

このことは求人広告の世界だけにとどまらないのではないか。われわれの社会は、これから先さまざまな面で、インターネットの方が現実世界となり、現実世界の方がむしろ仮想世界となるような逆転現象が起こって来るのではないか。

恐るべきことである。そうなると、例えば一日中インターネットで仕事をして、仕事が終わったら、現実世界で骨休めをするなんてことが珍しくなくなるだろう。そして、昔の人はね、現実世界で仕事をして、仕事が終わったらテレビを見たり、読書をしたり、ゲームをしたりして、仮想世界で骨休めをしてたんだって、おかしいね、なんて言われたりするんだろうか。